平塚市では1日に5.5人の新生児が誕生しています。万一の大地震が発生した場合でも、診療を止めることなく妊婦さんや赤ちゃんの命を守ることは、地域のマタニティクリニックとして大切な使命でもあるのです。
当クリニックが開院したのは2011年。東日本大震災の発生により、予定を遅らせての開院でした。そのため当院では、開院後すぐにソーラーパネルを設置し、停電時においても診療に必要な電源を供給できる体制を整え、職員の防災意識を高めてまいりました。
また、東日本大震災クラスの災害に際しても、患者さんや新生児の安全を確保できるよう、法定で定められた年2回の消防訓練のみならず、独自の防災訓練に取り組んでいます。
右図:平塚市役所 災害対策課【災害対策】平塚市地震防災マップ・津波ハザードマップ
もしも津波を伴う大地震が発生した際、海に面している平塚市は、ハザードマップ上、南側の多くが津波被害に見舞われると想定されます。海から離れた場所に位置する当クリニックは、揺れやすさの指標や建物の倒壊率も低く、比較的地盤も安定しているため、災害に強い立地に建っています。
しかしながら、東日本大震災の教訓を踏まえ、災害への「備え」は想定外に対応するものでなくてはなりません。とくに診療を続けるのに大切なのは、ライフラインの停止に対する備えです。当クリニック設置のソーラーパネルは、4キロワット程度の電源に対応し、得られた電源はバッテリーへ備蓄することが可能です。
万一、院内から外へ避難しないといけない災害が起こったとしても、各セクションの責任者が責任を持って患者さんを誘導します。災害時には当クリニック2Fが災害本部となり、各セクションの責任者は、それぞれの状況を本部へ報告。避難が必要であれば、各セクションごとに防災用品を活用し、患者の皆さまを誘導します。新生児室にいる赤ちゃんは、看護スタッフが専用の搬送用具によって安全・迅速に院外へ搬送します。
現行の消防法では年2回の消防訓練が法令で定められていますが、それだけでは大震災クラスの災害には対応できません。
当クリニックが倒壊する危険性は極めて少ないといえますが、もし院内へ戻れないほどの大震災が発生した場合に備え、私たちは年に2回の大規模な防災訓練を実施しています。これは、神明中学校や総合公園への避難を余儀なくされ、私たちスタッフも被災しながらテントを張り、必要な医療行為を継続するための訓練です。
訓練は、当院の駐車場を避難所に見立て、分娩室・病室・産後部屋となるインナーテントを備えた8人用シェルターを2つ、薬品や衛生管理品、食料を置く倉庫となるタープを2つ、さらにトイレやゴミ入れを設置し、実際に炊き出しまでを行うもの。事務員やセクレタリーも含めた20名のスタッフで30分を目標に設営しています。
2018年11月1日
2017年5月23日
応急対応の訓練として平塚消防署のご協力をいただき救命講習を行いました。
2017年9月19日
平塚消防署のご協力をいただき避難訓練を実施・レクチャーをしていただきました。 また、避難訓練後には消防隊員の方より救助活動の基礎講習や訓練講習を開催しました。
2019年12月3日
2019年12月3日
2018年11月1日
食料の備蓄は300食分の非常食と、500食分の調理用食材の合計800食分を常備しています。これは職員と患者さんを合わせて1週間分に相当します。
また、赤ちゃんを取り上げるだけであれば電力はほとんど必要としませんが、破水してないか、胎盤がはがれてないかをチェックするにはエコーが使えると安心です。そのため、当クリニックでは、屋外でも超音波による診療を続けられるよう、ポータブル発電機や1600Wの発電機を備えています。さらに院内からエコーを運ぶことができれば、避難先でお腹の中の赤ちゃんの様子を知ることも可能です。
そして、大震災が起こった際、最も重要なのはマンパワーの確保です。看護以外のスタッフはどうしても家の方にかかりきりになってしまいがちですが、こうした訓練を行うことで災害に対する高い意識が醸成されます。
いざというときの行動は、トレーニングの範疇でしか行動できません。だからこそ当クリニックでは、防災訓練も最大規模で行い、その中でスタッフ全員がさまざまなケースに対処できるようトレーニングにつとめているのです。